ⓔコラム18-11-2 水俣病 (Minamata disease):有機水銀 (メチル水銀) 中毒
代表的な有機水銀 (メチル水銀) 中毒で,疾患多発地帯の地名がそのまま病名になっている.有機水銀中毒の原因はチッソ水俣工場のアセトアルデヒド排水に含まれていた微量水銀が食物連鎖によって魚介類に濃縮して蓄積され,それを摂取したヒトやネコに多発したためである.疾患の公式確認は1956年だが,すでに1940年代には発症していたと考えられている.当初の中毒発生は,工場排水路のある水俣湾岸に限られていたが,1958年に排水路が不知火海に注ぐ河口に付け替えられてから,被害区域は不知火海沿岸一帯へと広がった.1959年頃からメチル水銀がこの疾患の原因であることが疑われていたものの,水俣病の原因がメチル水銀であるとはっきり断定されたのは,1968年9月26日であり,このため1960年には新潟市の阿賀野川流域でも工場からの水銀を含む排水が原因で多数の患者が発生した (新潟水俣病).2011年までに公害健康被害補償法などにより認定された患者数は2273人に達している.
〔古谷博和〕